こうしたことを考えると、PBRが1倍以下であるのは、本業の将来性が見込めない衰退産業(衰退企業)だけといっても過言ではないはずだ。本業は好調だが、巨額の投資に失敗して不良資産を抱え込んでいる(持っている資産の価値がバランスシートに計上されている金額よりはるかに小さい)といった場合もあり得るが、特殊なケースであろう。したがって、普通の会社のPBRは1倍を超えているはずである。

 ところが、実際には、比較的多くの企業のPBRが1倍を下回っている。その企業が衰退企業でないのなら、投資を積極的に検討すべきであろう。もちろん、特殊要因がある場合は別だが、一般論としては割安であると考えてよい。

企業のPBRだけを見て
株価の水準を判断してはいけない

 PERは企業により大きく異なるが、PBRも企業により大きく異なるので、要注意である。例えば、「塚崎経済研究所」という上場企業があったとして、収入は講演料や原稿料だとする。講演や原稿の依頼が多いとすれば、そこそこの利益が見込まれるため、株価が比較的高水準であっても不思議ではない。

 同社のPBRを計算してみると、仮に資産がパソコン1台だけだとすれば、PBRは非常に高くなるが、同社が講演会場を自社ビルとして所有していたとしたら、純資産は相当大きくなり、PBRは相当小さくなる。

 PBRだけでは、どちらの企業が優れているかを判断できず、株価の将来性についても断言できないため、これだけでは、前者の企業の株価が割安だとは到底言えない。

大不況時でも、PBRは
異常値を示さない

 PERは、資産売却益の計上や大不況などの際には異常値を示すので要注意だが、PBRに関しては、その心配は不要だ。利益は毎年振れるが、純資産は、資本金と過去に積み上げられた内部留保に今期の内部留保が加わるだけなので、大きく変動することはまれだからである。

 したがって、PBRの変動は、大不況時であっても株価の変動と似たような動きをすると考えてよい。そして、その水準が1倍前後であれば積極的に買いを検討し、それ以上であれば企業の特徴や成長性などを慎重に考えて投資の可否を判断する、ということではなかろうか。