企業が創業した当初は、赤字になるのが普通である。ノウハウがたまり、知名度が上がって固定客が獲得できるまでに計上した赤字は、前向きな赤字である。その分だけ財務諸表上の純資産は減るけれども、企業の価値が下がるわけではなく、株価が下がる理由にもならない。したがって、その分だけPBRが1倍を超えることは自然なことなのだ。

 その意味では、PBRは1倍が普通なのではなく、1倍を少し上回るのが普通だ。しかし、日本の実情をみると、残念ながら必ずしもそうはなっていない。

適正水準の議論は
短期投資には不向き

 本稿では、PBRによって株価の割安、割高を判別できることを記してきたが、これは長期投資のときに役立つものであって、今日買って明日売るような短期投資には役に立たない。

 短期においては、相場の流れが重要だ。なぜなら、割高の株がさらに買われたり、割安の株がさらに売られたりすることも珍しくないからだ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係がない。また、当然であるが、投資は自己責任でお願いしたい。