副業で、ジムのインストラクターの
バイトをすることに
昨年9月中旬のある日、ジムでのトレーニングを終え帰宅しようとしていたAを、Bが呼び止め、
「確かAさんは以前、都内のスポーツジムでインストラクターをしていたと話してたよね?」
と言い出した。
「ええ。でもそれが何か?」
「実はトレーナーの1人が急に辞めてしまって、困っている。それで頼みなんだけど、ウチのジムでインストラクターのバイトをやらない? 週3日、1日4時間位入ってもらえるとありがたいな」
「それ、マジですか? バイト代はいくらもらえます?」
「時給は1500円で1日で6000円。月12日働くと7万2000円になるけど。どう?」
おまけにAがバイトをしている期間は、ジムの月謝はタダにするという。
「やった!これで金欠とはオサラバだ。Bさん、ぜひよろしくお願いします」
そして次の日から、Aはジムでバイトをすることになった。
もともと毎日のようにジム通いをしていたので、その時間がバイトに置き換わっただけで、Aの本業には何ら支障はなかったし、常連客とは顔なじみなので楽しくおしゃべりをしながら仕事に励んだ。そして利用者がいないときには自分のトレーニング。Aにとってはこの上ない環境だった。
ところが今年1月の中旬、Aがバイトを始めて4カ月が過ぎた頃のことだった。
「2階の倉庫からプロテイン入りの段ボール箱を取ってきてくれないか?」
Bに頼まれたAは倉庫に上がり、抱えるのがやっとの大きさの段ボールを持って、20段ある急勾配の階段を2段降りたところでバランスを崩した。そして叫び声を上げながら荷物と一緒にまっさかさまに転落した。
あわててBが駆け付けると、Aは段ボールの下敷きになったまま倒れていた。救急車を呼び搬送された病院の診断では腰と足の骨を折る全治2カ月の大けがで、歩行ができないため入院治療が必要だと言われた。