「その高校は、日頃から近くの学校としょっちゅうけんかしているという話がありました」

 選ばれなかった理由が野球以外の事情にあったようだ。

選考委員長が苦しい言い訳
その裏には「言えない」事情?

 多くの識者が、東海ブロックの選考委員長を務めた鬼嶋一司氏らの説明に厳しい異論を投げかけている。そもそも、「甲子園で勝てるチームを選んだ」という説明が、センバツの主旨や選考の最も重要な条件とは理解しがたい。強さを追求する大会なら、なぜわざわざ「21世紀枠」を設定するのか。その矛盾が理解できない。

 鬼嶋氏はこう話したとスポニチは報じている。

「聖隷クリストファーは頭とハートを使う高校生らしい野球で、2回戦、準決勝で9回に見事な逆転劇を見せた。立派な戦いぶり。個人の力量に勝る大垣日大か、粘り強さの聖隷クリストファーかで選考委員の賛否が分かれましたが、投打に勝る大垣日大を推薦校とする。特に投手力で差があった。春の選抜大会では失点の多いチームは厳しい。大垣日大は総合力の高いチーム。静岡同士ということは全く考慮していなかった。甲子園で勝てる可能性の高いチームを選んだ」

 もっともらしい説明だが、対戦してもいないチームの実力を机上で判定すること自体がナンセンスではないか。しかも、「個々の力だけでなく、チームとして一体になったとき、どんなプラスアルファの力が出るか」が野球の醍醐味であり、ことに高校野球の最も魅力的な要素であり、取り組む目標ではないのか。これを軽視し、個々の力を優先するなど、高校野球の風上にも置けない。

 だが、そんな批判は、鬼嶋氏らには百も承知の「常識」だろう。NHKの高校野球中継の解説者であり、慶応義塾大学の監督、川崎製鉄千葉の監督も歴任した根っからの野球人だ。学生野球のなんたるかを熟知している人ではないか。この人が恥を忍んで、素人が聞いてもおかしいと思う説明(苦しい言い訳?)をしたのは、本当は言えないことがあったからではないか、そう考えたほうが理解しやすい。