ところで、「言葉の力」について言えば、知っている言葉の量、すなわち「語彙」を増やしていくことはとても重要なことです。

 自分がどれだけいいアイディアを持っていたとしても、それを言葉で表現し、相手に伝えなければ、何も考えていないのと同じで意味がありません。

 そのためにも、人と話したり新聞を読んだりして、社会や世界の変化を理解し、新しい言葉をどんどん身に付けていくことは一流のビジネスパーソンにとって必要不可欠と言えるでしょう。

言葉の「ニュアンスの違い」に
敏感になろう

 その一方で、ただ単に自分の考えを表現するだけでは不充分な場合があります。

 私の教え子で、商社に就職したAさんからこんな電話がかかってきました。

「上司に『了解しました』とメールを返したら、ものすごく怒られてしまいました。先生、私に言葉を教えてください!」と言うのです。

 そもそも「了解」は軍隊で使われるような言葉ですから、ビジネスにふさわしい言葉ではありません。また、「了」という漢字は「垂れ下がったもの」や「両肘がないもの」を表し、あまりいい意味を持っていないのです。それに「了解」は、本来「諒解」または「憭解」と書くべきところを略して書いたものなので、略式の書き方を目上の方に使うのは、やはり適切ではないと思います。

 せっかく「あなたの言っていることを理解しました」というポジティブな思いを伝えるのに、間違った言葉遣いで上司の不興を買ってしまっては台無しです。

 やはりこの場合は、「了解しました」と同じ意味でも、相手のことを敬うニュアンスが出る「承知しました」、あるいはもっと丁寧に「承知致しました」を選んで使うのがふさわしいでしょう。

 また、同じ「謝る」言葉でも、誰に対して謝るか、過ちの程度はどのくらいなのかによってどの言葉を使うべきかが変わってきます。