しかし、どれだけ周囲に確認をしたところで、寒がっている人と暑がっている人は正反対の言い分を抱えている。対立して当然だ。

「これが学校や家庭であれば話し合いがしやすいですが、職場だと上下関係があるために、部下が意見を譲りがちです。もし、自分の部下が意見を言いづらそうにしている場合は、『俺は少し肌寒く感じるんだけど、みんなはどう?』と、部下の気持ちをくみ取って代弁できるとスマートな印象を持たれると思いますよ」

「デキる上司は部下に我慢をさせません」と語る美月氏は、上司の立場から、温度設定の攻防戦の切り抜け方を教えてくれた。

「全員の希望通りにするのは正直不可能ですが、できる限り個々人の要望が通るように働きかけるとよいでしょう。不満の原因がデスクの位置にあるなら、上司だからこそできる提案としては、サーキュレーターや扇風機を導入して空気を循環させる、席替えをする、フリーアドレス化するなどの対策が考えられます」

 環境やシステムを変えるだけで悩みが解消できるならば、指揮を執れる立場の人間が率先して動けるとベストだ。

「もし、これらの対策を実践してみても暑がり派・寒がり派双方が満足できる状況にならなかった場合は、環境省が推奨している設定温度を提示し、それを順守してもらうと、怒りの矛先を第三者に向けられます。そうしたうえで、あとは個々人ができる範囲で対策をしてもらうという方法が、一番角が立たないのではないでしょうか」

 環境省は、暖房時は20度、冷房時は28度の空調の温度設定を推奨している。両者の折り合いがつかないときは、「環境省が20度設定を推奨しているから」など、職場外の第三者を登場させて話をつけると、穏便に解決できるかもしれない。