数百のプランをどうやってシミュレーション?
水の動きなどの細かい表現も顔面識別技術を活用

 ただ、こうした調整はすべてコンピューターにインストールされた専用プラットフォームの上、つまりバーチャルリアリティー空間で行われたもので、プランが確定してから、はじめて人間が登場して実演を練習する。

 このプラットフォームは、北京理工大学デジタル演出・シミュレーション技術重点研究室のバーチャルシミュレーションチームが大人数の参加者が登場する大型イベントのために開発したもので、AI、5G、AR、裸眼3D、クラウドなどの技術を活用している。出演者である大群衆の登場、退場の順序とタイミングから花火の打ち上げタイミングと間隔までを含む開幕式のすべてが、このプラットフォームの上で覚えられないほどの回数でシミュレーションされた。アナログ時代には、またはアナログ的手段では、まったく考えられない仕業だ。

 鳥の巣の床には、総面積が1万0393平方メートルに及んだ全LEDの映像が投射できる床ディスプレーが敷かれている。いうまでもなく、初めての試みだ。映像の画質は16Kに達しているといわれる。5カ月間に及んだ超ハードな練習とリハーサルを支えてきたばかりでなく、マイナス35度の極寒にも耐えてきたから、その品質は評価された。

 会場を走る、または踊る出演者の足元に現れた水の動きなどの細かい表現も顔面識別技術を活用して、出演者ごとにシステムが追いながら、それぞれの指示を出す。600人以上の人物を人工知能とAI技術でリアルに捉えて個別に対応できる。これまでは人海戦術を使用した大場面に使えなかった細かい表現は、いまや出演者個人を単位にして実現できるようになった。

 こうした最新技術を駆使した実例は、語り尽くせないほどある。北京五輪の開幕式、いやそれだけではなく、北京五輪全体が最新の技術を凝縮したスポーツの祭典だと言えよう。