(1)では、ほとんどの人が2万円得するので隣町に行きますが、(2)では、2万円得するために隣町に行くのは半分くらいです。(3)では、2万円得するために隣町に行く人はほとんどいなくなってしまいます。

 隣町まで行って2万円得をするという現象は変わらないのに、なぜ(1)から(3)になると行動は逆転してしまうのでしょうか?

 答えは、人間の脳内では大きな買い物をするときに、「安い・高い」を測るモノサシのサイズが変わってしまうからです。大きなモノサシを使うと、小さなモノサシを使わなくなってしまいます。

 簡単に言うと、「安い・高い」を考えるモノサシがインフレしているのです。人生で一番高い買い物であるマイホームを買うときに、ほとんどの人はインフレ・モノサシになってしまいます

インフレ・モノサシにならないために
気をつけるべきこと

 いつ見ても暇そうな高級家具店や新車ディーラー、大型家電ショップには、夢のマイホームを買った夫婦がインフレ・モノサシで「せっかく新しい家を買ったので」との思いから、あまり深く考えずに家具、カーテン、家電、新車を買ってしまいます。

 その結果、新規分譲地の新築にはインフレ・モノサシになった夫婦が住み、最新の家具や家電を揃えて、新車がガレージに並ぶこととなります。

 うちに限っては「家は新築で買うけど、家具、家電、マイカーはアパートで使っていたものを今までどおり使おう」と思っていても、お隣さんもお向かいさんも新しいのを買っているから、結局、うちも買おうとなってしまいます。

 経済産業省によれば、日本における新築住宅建設には2倍以上の経済波及効果があるとされています。つまり、3000万円の注文住宅が1つ建てられれば、建材の発注や職人の給料のほかに、それらが消費に回り、さらに住宅購入後に購入する家具や家電製品、自動車などで、3000万円程度の消費が生じることになります。

 では、どうすればインフレ・モノサシにならないでいられるでしょうか?

 その答えは、新築マイホームを買わないことです。

 どうしても、マイホームを買うというのなら、賃貸併用住宅をローコストメーカーで建てるか中古の住宅にすることです。

 私のまわりでFIREした人のほとんどが中古住宅を買っています。もちろん私自身も、コスパ重視で売りやすく貸しやすい築20年の中古住宅を土地値程度で買って住んでいます。

 最も重要なのは、家を買うなど大きな買い物をしたあとは、自分のモノサシがインフレ・モノサシになっていると考えて自制することです。新築マイホームを購入した人にとっては、しばらくの間、1000円札は誤差のように思えるからです。