衆院小選挙区の「10増10減」を巡って、自民党内に見直し論が強まっているという。定数減の対象県に自民党の実力者の地元が多いことも影響していそうだ衆院小選挙区の「10増10減」を巡って、自民党内に見直し論が強まっているという。定数減の対象県に自民党の実力者の地元が多いことも影響していそうだ Photo:kokouu/gettyimages

 かつて大平正芳内閣で徴税の効率化や脱税の防止のため、「納税者番号制度」に近い「グリーンカード制度」が法制化された。ところが、実施段階になって金融機関などの強い反対に遭って制度そのものがつぶされたことがある。この導入・廃止の両方に関わったのが当時の自民党の実力者、金丸信だ。

 金丸は親類でもあった蔵相、竹下登に頼まれて改正所得税法を成立させたが、郵便貯金制度が危なくなるとして今度は郵政族のボスとして制度をつぶしたのだった。金丸は「グリーンカードの葬儀委員長」と皮肉られた。このグリーンカードとは質が全く異なるが、今また衆院小選挙区の「10増10減」が「第二のグリーンカード」になる可能性が出てきた。自公提出の法律として決まっているにもかかわらず、自民党内に見直し論が強まっているからだ。

「10増10減」は2020年国政調査の確定値に基づいて算出された。30年と40年の推計人口に基づく定数を今回の方式で試算すると、現行定数に比べて30年で「13増13減」、40年で「16増16減」となる。地方の衆院議員が減り、都市部の衆院議員が増える流れが加速される。「地方軽視」の批判が出ても不思議はない。

 ただし、「10増10減」が決まるまでの経緯を振り返ると、事は単純ではない。与野党合意の上で14年に有識者による第三者機関を設置して議論を始め、当時の首相、安倍晋三も明言した。