「外国企業にとって日本が長期的に信頼できるパートナーかどうかに疑問を生じさせる」
こう語ったのは在日米国商工会議所(ACCJ)特別顧問のクリストファー・ラフルアーだ。韓国の「ハンギョレ新聞」が2月11日、東京発の特派員電で報じた。ラフルアーは元米国の駐マレーシア大使だが、日本では元首相、宮澤喜一の娘婿として知られる。宮澤の親戚でもある首相、岸田文雄も「何度も会ったことがある」と語るほどの旧知の米国人だ。最近では演技派女優として頭角を現す女優、宮澤エマの父と言った方が通りは良いかもしれない。
ラフルアーが指摘したのは岸田が打ち出した水際対策への警告といってよかった。在日米国企業を巡る実情についても言及した。
「加盟企業で少なくとも150人余りの社員が入国できず、家族を含めると数百人に上る」
こうした事情は日本の経済界も同様だ。経団連会長の十倉雅和は岸田に直接、厳しい入国規制の緩和を求めた。十倉は1月の段階で政府の水際対策を「鎖国政策」と断じ、「ビジネスは国内だけで成り立っているわけではない」と政府に注文を付けたが、その後も水際対策は継続され、経済界のイライラは募る一方だった。ビジネスマンだけでなく外国人留学生、文化・スポーツなどの分野でも人の移動、交流に大きな支障が出ている。
さらにこの規制に関して将来的なリスクを指摘する声もある。
「このままではますます日本経済が衰退する。日本はいざというときに『鎖国をする国なんだ』と思われる」(経団連幹部)
「国内の感染拡大を防ぐための水際対策だった。ここまで感染が広がれば水際対策の意味がなくなった。それよりももっと経済を動かすべきだ」(危機管理担当の元政府高官)
確かに1日の新規感染者が10万人を超える日も出て、水際対策継続への不満が増幅した。ただし、岸田は緩和に踏み出すに当たって、自ら設定した高い壁を乗り越えなければならなかった。