2月28日、ウクライナのキエフでスピーチする大統領のゼレンスキー。首相の岸田文雄は同日夜、ゼレンスキーと電話会談を行った2月28日、ウクライナのキエフでスピーチする大統領のゼレンスキー。首相の岸田文雄は同日夜、ゼレンスキーと電話会談を行った 写真:AA/時事通信フォト

「存在の耐えられない軽さ」というアメリカ映画があった。米ソ冷戦時代のチェコスロバキアで生まれた民主化運動、「プラハの春」をモチーフにした約3時間に及ぶ長編作。美しいプラハの街は突然現れた旧ソ連軍の大型戦車によって押しつぶされる。プラハの街を走行する戦車の姿がモノクロのニュース映像として差し込まれ、ユニークな題名と共に強烈な印象を残す。その「プラハの春」から54年。今度はロシアの戦車がウクライナの首都キエフ近郊に進軍した。映画のプラハとキエフが重なった。

 このウクライナへの軍事侵攻を決断、実行したロシア大統領のプーチンは、2月24日午前11時50分(日本時間)の演説で侵攻の正当性を力説した。

「北大西洋条約機構(NATO)は抗議や懸念にもかかわらず拡大し続けた。これはロシア封じ込めの政策だ。彼らはレッドラインを越えた」(共同通信電)

 これに対し、先進7カ国(G7)は経済制裁で足並みをそろえ、プーチンに強い警告を発した。しかし、米国に対して取りつかれたような敵意を抱くプーチンは聞く耳を持たず、ウクライナ全土に向けて激しい攻撃を繰り返す。プーチンの決断の背景には、米国の国際社会の中での影響力低下がある。米大統領バイデンが早々にウクライナへの軍事力不行使を表明したことも大きい。

「米国が超大国と呼ばれたのは同時に世界2カ所で戦争を遂行できる国力があったからだが、今やそのパワーを失った」(外務省幹部)