物流危機#9Photo:Bloomberg/gettyimages

コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパンは、インターネット通販の本格展開に乗り出した。国内約2万店の店舗網を生かし、2025年度にも全国に拡大する。“鬼門”のEC事業の底上げはなるのか。特集『物流危機』(全14回)の#9では、内部資料などを基に、成否を左右しかねない二つの難題の存在を明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

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新ブランド「セブンナウ」本格展開
出遅れたEC事業復活の“切り札”

 7NOW(セブンナウ)――。

 セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン-イレブン・ジャパンは2月25日、インターネット通販のブランド名を刷新し、サービスを本格展開する。

 セブンナウとは、スマートフォンで注文した商品を利用者の自宅や指定場所に届けるサービスだ。

 実は、このサービスは競合のECと大きな違いを持つ。それが、セブン-イレブンの最大の武器ともいえる店舗網を活用するという点である。

 サービスの仕組みは至ってシンプルだ。利用者はスマホで近隣のセブン-イレブンが扱う商品を注文できる。

 注文を受けた店舗では、店員が商品をピックアップし、配達員に手渡す。購入商品は利用者の元に最短30分で届けられる(下図参照)。

 原型の「セブン-イレブン ネットコンビニ」は2017年に北海道でスタートし、地域やサービスの内容を徐々に拡大してきた。

 実は、セブンナウというサービス名は米セブン-イレブンが展開する宅配サービスと同じだ。米国で軌道に乗りつつあるサービスを“逆輸入”した格好ともいえる。ブランドの刷新と併せ、サービスの対象店舗は1200店に拡大した。

「流通の巨人」とも形容されるセブン&アイだが、ことECの分野では、アマゾンジャパンや楽天グループといった国内大手の後塵を拝してきた。

 鈴木敏文・前セブン&アイ会長の大号令によって進められた、店舗とネットを融合する「オムニチャネル」戦略も不発に終わった。セブンナウこそがグループのEC事業の立て直しの頼みの綱なのだ。

 ただし、その“切り札”には二つのボトルネックが存在する。一つが、崩壊の危機に直面する物流面による物理的な制約である。

 そしてもう一つが、ダイヤモンド編集部が報じたセブン&アイの「DX敗戦」の主因となったグループ内の“分断”によるものだ(特集『セブンDX敗戦』参照)。

 次ページからは、社外秘の内部資料に記された数値目標や、グループ企業の本音などを基に、乾坤一擲の大プロジェクトの成否を左右しかねない二つの難題についてひもといていく。