物流危機#7Photo:PIXTA

物流施設の開発競争が過熱し、用地獲得が難しくなっている。そんな中にあって、地上げに成功しやすく、用地を手に入れやすくなる「エリアとやり口」がある。特集『物流危機』(全14回)の#7では、物流不動産開発の最新事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

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地権者220人の地区で
全員の地上げの準備が整う

「本当にここで物流施設を開発できるものなのか」――。ゼネコン大手の鹿島が開発話を持ち掛けてきたとき、首都圏を中心に産業用地の開発を手掛けるエム・ケーの渡辺光明専務は、すぐには話に乗れなかった。開発する土地が、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の青梅インターチェンジ(IC)に隣接する、東京都青梅市の今井地区だったからだ。

 青梅市では少なくとも20年以上前から開発話がたびたび持ち上がっていた。あるときは地元議員が「俺が話を進めるから大丈夫だ」と公言し、またあるときは地元の不動産業者が土地を転売するため地権者から地上げして、土地が虫食い状態になっているといったうわさも出ていた。

 エム・ケーにも昔、ゼネコンや不動産業者から話が持ち込まれた。しかし、地権者である農家の多くがここで農業を営んでいるのを見て、計画は絵空事だと感じた。

 だから最近、鹿島が開発話を持ち込んだとき、眉をひそめた。地権者は220人にも上る。その全員が地上げに賛成するのか疑わしかった。

 それでも、鹿島には土地区画整理事業に通じているエム・ケーと組めば計画が進められるという勝算があったのだろう。懸念とは裏腹に、地権者の協力も得られるめどが立ち、開発に向けての準備が整った。つまり地上げが成功しやすい状況に持っていけたのである。