老木氏が指摘する「違和感」とは、外耳炎や難聴の具体的な症状に限らない。予兆のように別の症状が見られるケースもあるという。

「耳の詰まる感じ、こもっているような閉塞感、耳鳴りなどは、軽い難聴のサインの可能性が考えられます。すぐに耳鼻科にかかってください。ほかにも、以前よりも人の声が遠く聞こえたり、家族にテレビの音量を上げすぎだと指摘されたりなど、『聞こえ』に関して普段と違う点を感じたら、すぐにイヤホンの使用をやめ、取り返しがつかなくなる前に専門医に診てもらいましょう」

 とはいえ、すでに耳のトラブルが出始めているものの、ウェブ会議などでやむを得ずイヤホンを使わないといけない人もいるかもしれない。そうした場面では、どのように対応したらいいのだろうか。

「やむを得ない場合でもヘッドフォンを使うなど、イヤホンの使用は避けたほうが安全です。ヘッドフォンなら耳の穴の中に入れないので、外耳炎のリスクは下げられると思います。難聴の場合は、音量によく注意して使用してください」

 ただし、医師が認めない限り、ヘッドフォンもあくまで応急処置にすぎないと考えるべきだろう。

 イヤホンにより起こる耳のトラブルは、日々のダメージの累積で引き起こされる。ということは、日頃から予防に気をつけていれば、発症リスクを抑えられるわけだ。イヤホンと正しく付き合い、耳の健康を維持しよう。

(監修/耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院理事長 老木浩之氏)

◎老木浩之(おいき・ひろゆき)
耳鼻咽喉科専門医、医学博士
医療法人hi−mex理事長、耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院院長。
近畿大学医学部卒業、神戸市立中央市民病院で副医長を務めた後、近畿大学病院講師、生長会府中病院耳鼻咽喉科部長を経て、2001年、大阪府和泉市で、耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院を開設。
現在、医療法人理事長として3院を運営。耳鼻咽喉科の地域医療を担う開業医の勉強会も主催している。
また、メディアに対しての取材・監修協力なども積極的に行っている。