世界的に「インフレ」が加速するなか、日本国内でも原材料価格の高騰などを背景とした小売りやメーカーの値上げが相次いでいる。だが、インフレへの懸念が高まるなかでも、コンビニエンスストア大手、ローソンの竹増貞信社長は値上げには消極的だ。特集『ポストコロナの新世界』の#13では、竹増社長に小売業が値上げに踏み切るべきではない理由を語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)
コロナで消費マインドは不安定に
消費は「安さ」と「価値」の二極化
――新型コロナウイルスの感染拡大で、消費動向はどのように変化しましたか。
新型コロナ禍では、コンビニエンスストアへの逆風が厳しかったです。いったんは落ち着きましたが、足元ではオミクロン株の流行が広がっています。消費者がなかなかペースをつかめずに、消費マインドが安定しにくい状況が続いていると感じます。
店頭を通じて見えてくるのが、消費者の行動の「二極化」です。生活防衛の意識が高まり、低価格商品が非常に人気です。例えば、ローソンストア100では、おかずがウインナーだけの200円(税抜き)の弁当が非常に反響を呼びました。
一方、それなりの価格帯でも手に取ってもらえる商品はあります。例えば、ローソンでは生ガトーショコラが4日間で100万個売れました。実はこれは、コンビニのスイーツでは高いとされてきた200円台の価格帯の商品です。
グループの高級スーパー、成城石井では、ワインや総菜など価格帯が高いものも好調です。消費者に価値を伝えることができれば、やや高めのものでも売れることが分かります。
背景には、消費者が抱えるストレスがあるのではないでしょうか。新型コロナとの戦いが長引くなかで、賃金や仕事がどうなるかといった先行き不安が根強くあります。
財布のひもを固くしめないといけないというストレスがある一方で、ちょっとした自分へのご褒美やストレスの解消につながる商品には、お金を払ってもよいという心理があるのだと感じます。
こうした、すごく安い「バリュー」とやや高めの「プレミアム」の商品がいずれも好調で、中途半端なものは厳しいという、やや極端な消費行動が目立ちます。