セブン&アイ・ホールディングスの「デジタルトランスフォーメーション(DX)敗戦」を巡り、同社が初めて取材に応じた。ダイヤモンド編集部の報道に対する見解は。特集『セブンDX敗戦』の#16では、DX部門を率いてきた米谷修・元執行役員の退任を受け、トップに就いた齋藤正記執行役員を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 名古屋和希、大矢博之)
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DX路線の引き継ぎ、具体化が使命
グループの考え方は変わっていない
――セブン&アイ・ホールディングス(HD)のDX戦略が混乱しています(特集『セブン&アイ「DX崩壊」が内部資料で判明、創業家・ITベンダー・コンサル…乱心の大抗争』参照)。
私の配下には社員だけで四百数十人いますが、(特集『セブンDX敗戦』)一連の記事を読み、メンバーの多くが残念に思っていることは確かです。加えて取引先や事業会社に動揺が広がり、そういった方々にも申し訳なく感じています。
内部資料が外に出たことが記事のきっかけですので、それを含め、われわれにも襟を正さないといけないところがあります。
DXの進捗について説明しますと、2年半前に「セブンペイ」問題があったことも踏まえ、高いレベルのセキュリティーの実現を進めています。
それとともに、全てをパートナーに依存するのではなく、自分たちで設計・構築して運用しようという戦略を、(2021年秋に退任した元執行役員の)米谷修さんのリーダーシップの下で実現してきました。「内製化」の言葉が独り歩きするのは困るのですが。
今最も重視するのは、中期経営計画(中計)とも連動しますが、顧客が求めるサービスをどうタイムリーに提供するか、そのためにどうデータを生かすかといった、顧客の体験価値を高めるための安全で効率の良い基盤の実現です。
もう一つはラストワンマイルのお届けサービス。例えば現在600店で展開中の「ネットコンビニ」サービスは、2月17日から1200店舗へと拡大しています。2年以上真剣に取り組んできたことがようやく花開こうとしています。
新たな価値を生み出し、既存の仕組みの効率化や店舗の生産性向上は、井阪隆一社長の号令の下に取り組んでいます。
DX部門だけが手掛けることではなく、事業会社が実現したいと考えたことを実現するためにわれわれが貢献していく。その構図が2年半前から形になっているところです。
もちろん全てが順風満帆とは言いません。ですが、この間の積み重ねが資産や財産として形成され、これから具体的なサービスや変革を実現していく矢先です。
現段階で、ある断面では失敗しているように見えるかもしれませんが、これまでの路線をやめたり、否定したりすることはありません。私自身は路線を引き継ぎ、これまで培ってきたことの上で、より良い形で具体的にしていくことが使命です。グループの一貫した考え方は変わっていません。
――ダイヤモンド編集部が入手した「中間報告」では、DX戦略に対する事業会社からの批判が集中しています。