セブン&アイ・ホールディングスのデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略は水泡に帰した。戦略を主導してきた「司令塔」は解体の憂き目に遭い、DX部門トップもグループを去った。特集『セブンDX敗戦』(全15回)の#9では、当初は大号令をかけたはずの経営陣がDX部門を「見殺し」にした理由を明らかにしていく。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)
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好業績に沸くセブン経営陣
DX崩壊に導いた「立役者」とは
「イオンを引き離したぞ!」
1月13日に開かれたセブン&アイ・ホールディングス(HD)の取締役会。経営幹部の多くがこんな満足感に包まれていた。
この日、セブン&アイは2022年2月期の連結業績予想を上方修正した。営業収益は期初予想より4130億円上乗せした8兆7220億円で、営業利益は200億円上積みした4000億円となる見通しだ。
イオンが既に公表していた22年2月期の営業利益予想は2000億~2200億円。セブン&アイの上方修正は、宿命のライバルにさらに差をつけた格好だ。
それだけではない。新型コロナウイルスの感染拡大を背景にセブン&アイの業績はここ数年、伸び悩みが続いていた。そうした停滞ムードを吹き飛ばすのに、22年2月期の業績予想の数字は十分なものだったのだ(下図参照)。
取締役会での楽観ムードは無理もないことかもしれない。だが実は、ここにセブン&アイのデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略が頓挫した一因が隠されている。
それは直近の好業績を導いた、ある「立役者」の存在にある。それこそが、グループ内での苛烈な序列を背景に猛烈な攻撃を仕掛け、DX戦略を崩壊の淵に追いやったのだ。
「強みは弱みにもなる」とはよく言われることだが、ここではそのような抽象論は語らない。極秘の内部資料を基に具体的に、セブン&アイが抱える“呪縛”を次のページから明らかにしていく。