セブンDX敗戦#14Photo by Kazutoshi Sumitomo, JIJI

セブン&アイ・ホールディングスのデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の崩壊は、ECサイト「オムニ7」とスマホ決済「セブンペイ」に続く“第三のデジタル敗戦”となった。セブン&アイのデジタル戦略はなぜ迷走を繰り返すのか。特集『セブンDX敗戦』(全15回)の#14では、失敗の連鎖を生む二族経営の呪縛を、同社が抱える構想中の大型極秘案件とともに明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

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DX崩壊は「第三のデジタル敗戦」
二族経営が引き起こす失敗の連鎖

 第三のデジタル敗戦――。

 1200億円もの巨費を投じて進めてきたデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の崩壊は、セブン&アイ・ホールディングスの歴史にそう刻まれることになるだろう。

 特集#11『【スクープ】セブン&アイがECサイト「オムニ7」23年にも閉鎖へ、“負の遺産”撤退が遅れた理由』で報じたように、2015年にスタートしたECサイト「オムニ7」は23年にもサービスを終える。

 インターネットで購入した商品を実店舗で受け取るというリアルとネットの融合を目指し、6年超にわたって経営資源を投下してきたが、EC市場で完全に埋没した。開始時期でいえば、これが第一の敗戦だ。

 次に、スマートフォン決済サービス「セブンペイ」の頓挫はまだ記憶に新しい。19年7月に鳴り物入りでスタートしたセブンペイは直後に不正利用が発覚。わずか3カ月後の同年9月にサービスを終了した。後に触れるが、この挫折がセブン&アイのデジタル戦略に大きな影を落とすことになる。

 そして、今回のDX敗戦である。大号令の下で進めてきたDX戦略は、司令塔の解体とDX責任者の事実上の“更迭”によって水泡に帰した。

 コンビニビジネスを生み出し、業界に革命を起こしたセブン&アイ。その巨大流通グループがなぜデジタル戦略では迷走を続けるのか。

 実はそこには、セブン&アイの経営に深く根付いた血脈、家族が大きく影響している。

 セブン&アイグループは、創業家である「伊藤家」と、コンビニを生み出し、まるで創業家のように君臨した鈴木敏文前会長による、いわば“二族経営”のような複雑な構造を抱えている。

 その構造に起因する、激しい路線対立や創業家による“介入”などがデジタル戦略の負の連鎖を生んでいるのだ。次ページから、グループが抱える“血の呪縛”を、構想中の大型極秘案件とともにひもといていく。