教育に関連する様々な事業で業界をリードしながら、さらなる進化を続ける総合教育カンパニー、スプリックス。同社代表取締役社長の常石博之氏による書籍『成し遂げる力 ニーズからすべてを始める 総合教育企業スプリックスのNo.1ブランド戦略』から、一部を抜粋して3回連載で公開します。
第2回は、塾と言えば受験対策を主目的とした集団指導の進学塾が大勢を占めていた25年前、なぜ、あえて学校の授業・テストをサポートする個別指導塾を始めたのか。現在に続く信念が詰まった創業のストーリーです。
塾は有名校に
合格させることだけが目的か
長い冬の間、雪に閉ざされる新潟県長岡市で、株式会社スプリックスは産声を上げました。社名の由来は、「春=spring」にちなんでいます。雪国にとっての春は、新しい生命の誕生する特別な思い入れのある季節です。私たちも教育を通じて、生徒たちの人生に新たなステージを生み出し、「春」を届けたい。そんな想いが社名の由来となっています。
創業者である平石明は、首都圏や新潟県の大手進学塾で講師を務めていた人物です。学生時代から塾講師のアルバイトを経験しており、子どもたちに教える喜び、分からない問題が解けるようになったときの笑顔や感謝の言葉、そして彼らが学習を通じて成長していく姿を目の当たりにできる醍醐味が忘れられず、就職先にも塾を選んだそうです。ところが、ある時期から塾のあり方に疑問を感じるようになります。
当時の学習塾で主流だったスタイルは、大人数の生徒に対して1人の講師が教える、集団指導塾です。そして、有名進学校への合格実績を出すことこそが塾という企業の目的であり、講師は1人でも多くの生徒を有名校へ合格させることが使命。平石は非常に優秀な講師であったため、塾の中でも上位クラスの子どもたちを担当し、有名校への合格者もどんどん生み出していきました。
ところが、集団指導のスタイルでは、上位クラスの中でも1番の生徒と最下位の生徒が生まれます。しかし授業は、合格実績を出すためにどんどん進んで行かざるを得ません。理解が深まらないまま、置いて行かれる生徒も出てきます。集団指導のシステムには課題が多いことに気付かされますが、有名校にどんどん生徒が合格すれば、それで自分自身も評価されます。疑問を抱きながらも講師を続けていた平石は、ある時上位クラスではなく、中下位クラスの生徒たちの授業を担当する機会を得ます。
上位クラスの生徒と比較すれば、中下位クラスの生徒たちは学習の進度も遅れており、学校の授業さえ分からないことも多い。しかし、教え方ひとつで彼らの伸びしろは無限にあるように感じたと平石は言います。分からない問題が分かるようになった時の、彼らの純粋な笑顔にも心を打たれました。