「自分がやりたかったのは、こういう授業だった」。学生時代のアルバイトで感じた、“子どもたちに教える喜び”という塾講師の原点を思い出し、こういう勉強につまずいている子どもたち、自分自身にも自信を無くしている子どもたちこそ自分が教えるべきではないか、と感じるようになりました。しかし、塾の経営においてトップ講師は上位クラスを担当するのが常識であり、有名校の合格実績に関係ない生徒をあえて教えることは、企業にとっては非効率なことでした。
このまま合格実績を出すために自分は優秀な生徒だけを教え続けるのだろうか。そんな悩みの真っただ中にあった頃、平石の父親が他界します。そして葬儀を終えたのち、平石はこう考えるようになったそうです。
「分かっていたつもりだったけど、本当に人の命は有限だったんだ。自分もいずれ必ず死ぬ。自分が生まれてきて死んでいく意味を、新しい教育の形を通して世の中に問いたい」。こうして平石は、当時の学習塾がターゲットにしていなかった子どもたち、勉強につまずいている子ども、勉強に自信をなくしている子どものための塾を作ることを決意します。
1997年、株式会社スプリックスは誕生し、個別指導形式の「森塾」の運営がスタートしたのです。
ちなみに、創業のころの「森塾」では「森先生はどなたですか?」とよく聞かれたそうです(笑)。「森塾」という名前は、森がきれいな花々だけでなく、苔や毛虫も含めて、さまざまな生命の一つひとつを大切に見守るように、多様な個性や能力を尊重しながら、一人ひとりの子どもたちにしっかりと貢献したい、という想いを表しています。
この森塾というブランド名への想い、そして春を届けるスプリックスという社名への想いが私たちの原点です。
授業が分かり、
定期テストで結果が出る“予習”に注力
お客様のニーズに耳を傾け、導き出された森塾最大の特徴が、「学校のテストで1科目20点以上成績が上がること」を保証する制度です。
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実際、私たちは学期ごとに保護者や生徒にアンケートを実施し、ニーズを拾い上げています。その中で、塾に子どもを通わせる保護者のニーズは、「成績を上げてほしい」「楽しく通わせてほしい」という2つに集約されています。そして子どもたちの声を聴くと、定期テストが今より各教科20点程度上がれば、自信が持てると言います。これら顕在化している顧客のニーズの“ど真ん中”をシンプルに追求するのが、私たちのやり方です。
まず、森塾では学校の授業の“予習”を行います。それは、学校の授業が分かるということこそが、成績を上げる一番の近道であると考えているからです。ミドル層の子どもの場合、学校の授業が分からない=つまらないために、授業中は机に突っ伏して寝ていることもあります。保護者や教師からすれば、何を居眠りなどしているのかと叱りたくなるところですが、聞いてもチンプンカンプンな授業を、顔を上げて聞いていろというのも無理があります。
子どもが授業に身が入っていないことに気づいたら、大人はその原因を排除してやる努力をするべきです。苦手意識があるから、授業を集中して聞くことができない。ならば、その苦手意識をなくしてやるのが塾の務めです。一度習ったところを教える復習型の授業の方が、教える側は楽です。復習をメインに行っている塾も少なくありません。もちろん、復習をして知識を定着させることは重要な学習方法のひとつですが、私たちがターゲットとするミドル層の子どもたちは、その前の段階で苦しんでいるのです。
そこで私たちは、学校の授業をしっかりと聞いて理解してもらうために、先回りして予習型の授業を行っています。想像してみてください。聞いても分からないしつまらないと思い込んでいた授業時間の中で、ある時、聞いたことのある話が出てくる。「そういえばこれ、森塾で聞いた内容だ」。こうなれば、子どもたちの顔は上がります。チンプンカンプンな話ではなく、少しでも内容が理解できれば、その先を聞きたくなるのは当然のことです。
しかも、出された例題も思いがけず解けてしまう。「森塾の授業で先生と一緒に解いたことのある問題と似てる」。まるで雷に打たれたかのような衝撃を受け、目の前の景色がパッと明るくなると言っても過言ではありません。授業が分かり、定期テストの点数が上がることが、どれほど子どもたちの背中を押すものなのか、分かっていただけるのではないでしょうか。