「女房」はもともと
「妻」の立場を下げた謙譲語

 それでは「女房」という言葉は、どのようにして使われるようになったのでしょうか?

 もともと「女房」は、自分の「妻」を表した言葉ではなく、身分の高い貴族に仕えて、身の回りの世話をした妻以外の女性を指していたことがわかります。紫式部や清少納言も天皇の妃の女房として働いていました。

「女房」が「妻」という意味で使われるようになったのは、江戸時代からです。

 もともと武士たちが、自分よりも立場が上の人に、自分の「妻」を紹介する際に、「私の身の回りの世話をしてくれる人」という意味で、「妻」の立場を下げた謙譲語として使われたのが、町人などにも広がったものと考えられます。

「家内」の意味は、
家で家事をしてくれる人

 それでは、「家内」はどうでしょうか?

「家内」の初出は1083年~1099年頃に書かれた『後二条師通記』という日記です。これには「国家并家内大事也」と記され、「国家と併せて、家の中のこともとても大事だ」という意味で書かれています。

 この「家の中」という言葉が、次第に「家の中にいる女性」を表すようになっていくわけですが、広く「妻」のことを「家内」と呼ぶようになったのは、明治時代になってからのことでした。

 男性が外で働き、女性は専業主婦として家の中で家事を行うという家庭のスタイルが生まれた時代です。これもまた、自分の上司など立場が上の人に「妻」を紹介する際に、「ふだんは家で家事をしてくれている人」という意味で「家内」という言葉を使うようになったのです。