民主主義の原則を
覆そうとするたくらみ

 トランプ派の共和党勢力は激戦州の州務長官の置き換えを試みる一方で、選挙管理の権限を行政機関の州知事や州務長官から、立法府の州議会に移行するための法改正も積極的に進めている。

 2021年12月6日付の政治経済誌『アトランティック』で、「トランプの次なるクーデターはすでに始まっている」と題する記事を執筆したバートン・ゲルマン氏によると、たとえば、ジョージア州ではすでに選挙管理の権限を州務長官から州議会に移す法改正を行っている。

 そのため、次の大統領選では州の選挙結果を認定するかどうかの決定は州務長官ではなく、共和党が支配する州議会、あるいは州議会が任命した選挙管理者が行う可能性があるという。

 これは、22年11月の選挙で州務長官をトランプ派の人間に置き換えられなかった場合に備えての対応ではないかと思われる(その場合は共和党支配の強い州議会に選挙結果に関する決定を委ねるということだ)。

 このようにトランプ派の共和党勢力は20年の失敗を繰り返さないために、あらゆる場合を想定して周到に準備をしているのだ。ゲルマン氏によれば、すでに16の州でジョージア州と同様の法改正が行われているという。

 このように州務長官など選挙管理者が注目されるなかで、特に懸念されるのは、暴力的なトランプ支持者による民主党や無党派の選挙管理者に対する脅迫や暴力事件が増えていることだ。

 ゲルマン氏によれば、トランプ支持者による殺害の脅迫などで仕事を辞めた選挙管理者は少なくないという。

 民主党の支持者が比較的多いジョージア州フルトン郡の選挙管理委員会で働いていた52歳の幹部職員はトランプ支持者から、「おまえたちは公開処刑される必要がある。ペイパービューで!」「ティック・ティック・ティック(カチカチ)……もうすぐだ!」など、数々の脅迫メールを受け取って怖くなり、仕事を辞めたそうだ。