トランプ大統領誕生のために
暴力も正当化する支持者たち

 トランプ支持者の怖いところは、トランプ氏を権力の座に戻すためには暴力を使うのもやむを得ないと考えている人が少なくないことである。

 実際、シカゴ大学の研究チームが行った調査では、「バイデン氏は正当な大統領ではない」「トランプ氏を権力の座に戻すためには暴力は正当化できる」という2つの命題を信じている人は、2000万~2500万人くらいいることが分かった。

 これは米国の民主主義にとって非常に怖い数字であり、民主的に国のリーダーを選び、平和的に権力移譲を行うという民主主義の根幹が崩れ始めていることを示している。トランプ氏によるうその拡散と選挙結果を覆そうとする一連のたくらみが影響していることは、間違いないだろう。

 ゲルマン氏は記事のなかで、「トランプ氏と彼の党は民主主義の本質的な機能(制度)が腐敗していること、詐欺的な主張が真実のようになること、不正行為によって選挙の勝者を変えられるかもしれないということを、途方もなく多くの米国人に思い知らせた。健康上の問題がなければ、ドナルド・トランプは2024年に共和党の大統領候補に指名され、勝利するだろう」と警鐘を鳴らしている。

 トランプ氏の権力への執着には恐るべきものがある。22年1月31日付のニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ氏が20年の選挙結果を覆すために個人弁護士のジュリアーニ氏に、六つの接戦州の投票機械を押収できるかどうか国土安全保障省に問い合わせるよう命じていたことを明らかにした。

 また、トランプ氏はバー司法長官(当時)に対しても、司法省が投票機械を押収できるかについて尋ねていたという。この考えに異を唱えたバー氏はその直後、司法長官を辞任している。

 このようにトランプ氏はあらゆる手段を尽くして権力にしがみつこうとしていたわけだが、24年の大統領選でも同じようなことをするだろう。それを止める手立てはあるのか。今やトランプ氏に完全に乗っ取られ、「トランプ党」になってしまったような共和党にそれを期待するのは難しい。