例えば、筆者は、次の職場で前の職場の仕事ぶりを批判したところ、次の職場が前の職場よりももっとダメな仕事ぶりで、入社早々すっかり警戒されたことがある。

 また、別の機会には、歓迎会の飲み会の席である有名な経済人の批判を気持ち良く述べた(金融的な知識を披瀝したい感情があったのだと思う)。すると、新しい職場の多くの人がその有名人を尊敬していて、「山崎さん、その話題はやめておきましょうよ」と話を遮られたことがある。これは気まずかった。

 いずれも、自分の知識や能力、価値観などを早く周囲に知ってほしいという焦りが生んだ失敗だった。

 転職後に大事なのは、自分を早く知ってもらうことよりも、相手を早くよく知ることの方だ。転職者は、あれこれ自分で説明しなくても職場で十分注目されているので焦るには及ばない。控えめが吉だ。

転職後の5箇条(2)
相手の名前を早く覚える

 最近はテレワークが増えてきたので事情が少し異なるかもしれないが、新しい人間関係やオフィス環境は、時にストレスの種になる。

 転職者から見ると、あちら側にはたくさんの人がいる一方、職場の人々は転職者の名前だけ覚えておけばいいので、条件が非対称だ。ではあるが、職場の人の顔と名前を早く覚えることは、自分のストレス軽減のためにも重要だし、相手に好印象を与える上でも有力な手段だ。

 過去に営業の仕事を経験したことがないせいもあり(理由にならないが)、筆者は人の名前を覚えることが得意ではない。

 しかし、知り合いの営業職経験者は、転職の面接の際にオンラインも含めて面接に出てきた人の顔と名前を全て覚えて、初出社の際にそれぞれ名前で呼びかけてあいさつしたという。筆者にもそのくらいの心がけがあれば、もう少し立派なビジネスマンになっていたかもしれない。