ウクライナ周囲を囲む
ロシア軍と連日続く情報戦

 NATO加盟国はウクライナに兵器の提供などで支援を行い、地理的にウクライナと近いNATO加盟国には米陸軍空挺(くうてい)師団などが駐留を開始した。

 しかし、ロシア軍がウクライナに対して本格的な軍事侵攻を開始した場合、NATO加盟国ではないウクライナで、NATO軍部隊が活動できるとは現時点では考えにくい。

 ウクライナの軍事予算は年間6000億円程度だが(2020年度)、国内でロシア軍と戦うためにはより多くの予算が必要との見方は強く、ウクライナ各地では中小企業の経営者や市民らが寄付金を集めて、軍事費の足しにしてもらっている。

 軍事費よりも大きな懸念材料は、戦火が拡大することでウクライナ経済の停滞がより深刻になる可能性が大きいことだ。米ビジネス経済研究センターの試算によると、8年近く続いたウクライナ東部の戦闘だけで、ウクライナのGDPが約30兆円減となった。

 ウクライナ東部の前線にいる兵士の士気は高いと伝えられているものの、新たな問題も発生している。

 前線の兵士はメッセージアプリ「テレグラム」を使って、グループ内で情報交換などをするケースが多いが、ここにウクライナ兵を装ったロシアの諜報(ちょうほう)機関関係者らしき人物が紛れ込み、ニセの情報が拡散され、それらの情報をウクライナ軍側が見つけて削除するイタチごっこが続いているのだという。

 さまざまな情報が飛び交う中で、ウクライナでは軍の兵士も市民も長期戦に備えている。緊張状態が続く中、ロシアメディアは24日午前、プーチン大統領が支配地域におけるロシア軍の軍事行動を承認したと速報で伝えた。

 事実上の宣戦布告だ。連日、数時間おきに情勢が変化しているが、これから何度かにわたってウクライナ危機についてリポートしていく。