世界的なグロース株の調整に巻き込まれて、日本を代表するグロース株も急落している。そもそもそれ以前がバブル水準まで買われていた側面があり、ようやく成長株を適正水準で買えるチャンスが巡ってきた。特集『日米テンバガー投資術』(全16回)の#1では、高値奪還を狙える株の条件を専門家に聞いた。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
「金利の上昇」と「行き過ぎの修正」で急落
成長株を割安な水準で買うチャンス到来か
「エムスリーは62%下落」「サイバーエージェントは39%下落」――。
年初から世界的に株価が調整しているが、その中でもハイテク企業を中心とするグロース株はたたき売り状態にある。冒頭の数字は昨年来高値からの株価の下落率だが、日本を代表するグロース企業であっても、新興企業のように株価が大きく調整している。
指数においても、日経平均は昨年来高値から15%の下落だが、IT企業が多く属する東証マザーズ指数は51%も下落している。個別では70%以上下落しているグロース企業もあり、グロース対バリューではバリュー株優位が鮮明になっている。
グロース株の低迷には、大きく二つの要因がある。長期金利の上昇と、コロナ禍でSaaS系に代表されるIT企業を中心に株価がバブル水準まで過熱していたことである。
なぜ長期金利の上昇がグロース株にとって逆風となるのか。難しい理論は省くが、適正な株価を算出するには、割引率(r)と成長率(g)が必要になる。グロース株は将来の高い利益成長を織り込んで株価が形成されている。
そのため、金利が上昇して将来の利益に対する割引率が高まると、グロース株の高バリュエーションが正当化できなくなる。加えて、米国金利は、上げ幅や回数などについての不透明感が嫌気されている面も強い。
つまり、足元のグロース株の急落は「金利の上昇」と「行き過ぎの調整」というダブルパンチを食らった結果である。問題はこの状況がいつまで続くかだが、金融の専門家の間でも意見が割れている。
だが、クレディ・スイス証券でインターネットセクターを担当する齋藤剛アナリストは「この状況は長く続かない」と指摘する。
ファンダメンタルズ(業績)は崩れておらず、成長率は変動していない。株価がボトム(下値)を付けるタイミングを当てるのは難しいが、ウクライナ危機が落ち着き、米国の金融政策の方向感が見えてくれば、相場の雰囲気が変わってくる可能性が高いからだ。
では、そのときに何を買うのか。
急落前までは、IT系企業を中心に、コロナ禍では利益が出ていないにもかかわらず、期待先行で株価が急騰していた銘柄も多かった。だが、金融相場から業績相場への移行と考えれば、シンプルに業績のいい会社を狙うのが正解だろう。
「金利が上昇する中では、グロース株が昨年11月のバリュエーションに戻ることはないでしょう。だとしても、利益が倍になれば、バリュエーションが半分になっても、株価は戻ります」(齋藤氏)
つまり、チェックすべきは「実績あるグロース企業で、しかも現在は株価が下落している企業」ということになる。
次ページでは直近5期の年平均成長率(CAGR)など複数指標でランキングした「直近5期売上高成長率ランキング」を公開。成長率に加えて、昨年来高値からの下落率も参考値として付けた。半値以下に調整した企業も目立つが、成長企業を割安な水準で買うことは投資の王道である。
果たして、これらの銘柄の株価は復活を遂げることができるのか。次ページでは、過去のデータからの分析だけではなく、二つの視点から将来の成長を見極めている。専門家の注目企業を紹介しつつ、再び高値を狙える企業の条件を分析していく。