年収が「非上場化」で上がる会社ランキング【東京都】で、1位となったのは松井証券。年収上昇可能金額は3337.0万円だった。

 次いで2位が日本オラクルで、3048.0万円増だった。年収上昇可能金額が3000万円を超えたのはこの2社のみだ。

 松井証券の21年3月期における配当総額は102.8億円。純利益とほぼ同額を配当として株主に分配している。この半分の額を連結従業員数(154人)で割ると、先述の年収上昇可能金額が算出される。

 2位の日本オラクルは、松井証券とともに年収上昇可能金額が3000万円を超えているが、連結従業員数が2407人と、松井証券と比べてけた違いに多いのが特徴的だ。配当総額は1467.3億円で、ランキングトップ10社の中では9位のゆうちょ銀行(配当総額1874.4億円)に次いで2番目に多かった。そのため配当総額の半分を従業員数で分割しても、年収上昇可能金額は高水準だった。

 日本オラクルの筆頭株主は米オラクルの日本法人で、発行株式の74%超を所有している(21年5月末時点)。

 今回のランキングでは、日本オラクルのようないわゆる子会社も上位に多数ランクインした。7位のセブン銀行(799.4万円増)はセブン-イレブン・ジャパン、9位のゆうちょ銀行(752.7万円増)は日本郵政が筆頭株主だ。

 また、年収を300万円以上上げられる計算となった49社のうち、連結従業員数が1000人を超えていたのは13社。1万人超の企業としては、9位のゆうちょ銀行が1万2451人だったほか、28位のソフトバンク(429.2万円増)が4万7313人、30位の東京エレクトロン(419.4万円増)が1万4479人だった。

 このように多くの従業員を抱える企業で配当の一部を賃上げに回すことができれば、経済に与えるインパクトも大きいといえるだろう。

 なお、今回のランキングでは、単体ベースの平均年収も載せた。例えば、1位の松井証券は918.1万円だ。各社は有価証券報告書の中で、平均年収を公開している。ただし、記載されているのは単体ベースの数字のみ。この金額は各社の年収の相場観をつかむためのものであり、あくまで参考値として見てほしい。

 加えて今回の試算で、配当総額を単体ではなく連結従業員数で割った理由について解説しておこう。持ち株会社制に移行した企業の場合、連結に比べ単体従業員数が極端に少なくなるケースが多いのだ。

 例えば83位の野村ホールディングス(202.9万円増)。連結従業員数2万6402人に対し、単体はわずか154人である。配当総額1071億円の半額を154人で割ったのでは、年収上昇可能金額として明らかに不適切だと判断した。

非上場化で年収はいくら上がる?
200万円超アップは84社

 今回、年収上昇可能金額が200万円を超えた企業は84社だった。最後に、この84社について業種別の傾向を確認しておこう。

 業種別に集計すると、最も多かったのは「不動産」で19社だった。ちなみに、不動産の中で最も順位が高かったのは、6位のアルデプロで1322.2万円増だった。ビルやマンションの仕入れ販売を行う企業だ。ただ、連結従業員数は18人と少ない。

 不動産で2番目に年収上昇可能金額が高かったのは、11位のヒューリック(623.9万円増)。連結従業員数は1934人だった。

 不動産に続いて、年収上昇可能金額が200万円を超えた企業が多かった業種は「サービス」で、11社だった。14位のモーニングスター(601.3万円増)、21位のアイモバイル(527.0万円増)などが上位にランクインした。

 そのほか、「情報・通信」が8社、「証券・商品先物」が8社、「その他金融」が7社と続いた。