「DXブーム」の推進役は、紛れもなく経済産業省だ。日本企業のITシステムの問題やDXの必要性、変わらなければ危機が来ると警鐘を鳴らした「2025年の崖」などのインパクトの強い内容からなる「DXレポート」を発表。さらに、各種のDX優遇施策を打ち出し、民間企業はそれに突き動かされてDX投資に動いた。しかし、それは想定通りの効果を上げているとはいえない状態にある。それはなぜなのか。特集『企業・ITベンダー・コンサル…DX狂騒曲 天国と地獄』(全14回)の#2では、DXブームの虚実について見ていこう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
1年間で4倍増の「DX取組企業」
しかしその効果は?
1227社。これが何の数字かお分かりだろうか。
これは金融庁の電子情報開示システム「EDINET」に、過去1年(2021年3月~22年2月)に登録された通期有価証券報告書に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を掲載した企業の数だ。IT企業のみならず、建設機械、生コンクリート、配管機材、食品、流通、家事外注サービス、アパレル、新聞社など、ありとあらゆる業種・企業がそこには並ぶ。ちなみに、前年同期の検索結果は320社しかなく、有報記載ベースだと、何らかの形でDXに取り組んだ日本企業が21年は20年の4倍に増えたということになる。
ガートナージャパンが同一の企業集団を対象にして、17年から毎年行っている調査がある。それによると、デジタルビジネスに全く取り組んでいない企業は17年には41.4%だったが、これが21年には17.5%にまで減少している。デジタルビジネスが実現した企業はまだ少数派ながらも、8割以上の企業がなんらかの形でDXに取り組んでいるということである。
DXという言葉を見ない日がないほど、それは日本社会に深く浸透した。現在IT市場に出回るIT構築案件には必ずDXの文字が入っているといっても過言ではないほどだ。
だが、ブームの過熱と相反するように、DXプロジェクトの成果が上がっていないという声が相次いでいる。それはなぜなのか。そこには、そもそも日本でDXがはやり始めた背景にある特殊事情と、それに伴う誤解と混乱が影響している。
誤解と混乱を引き起こしたのは、経済産業省とITベンダー、コンサルだ。DX導入を考えている企業は誤解したままカモにならないためにはどうしたらいいのか。次ページで詳しく見ていこう。