さらに、入社してからは、定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます。

 これが、○○会社の○○部長に、「あなたは何ができるのですか」と転職エージェントが聞くと、「部長ならできるのですが」という笑い話が生まれる原因です。

職務の成果ではなく
メンバーとしての協調性で評価

 こうした人事慣行が、オフィス・レイアウト、給与や人事評価に反映されています。未経験の職務に配置される人は、個室やコンパートメントに入れられてしまうと、何もわからず何もできない状態に陥ってしまうので、オフィスのレイアウトは大部屋形式となります。

 給与についても、職務による給与を与えることはできません。どんなに優秀な人でも、人事異動があった直後はずぶの素人で仕事がうまくできないのですから、職務の成果で評価することはできないのです。

 会社内での経験値が重視され、「メンバー」として経験年数が同じ同期入社社員には、基本同じような給与が支払われます。昇進、昇給も年次とともに徐々に上がっていくということになります。

 それでも、数年すると同期の間でも人事評価で差がついていくことになりますが、それはどの程度会社のために頑張っているかで判定されます。そして、その頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています。

 職務の成果ではありません。これが、長時間労働(必ずしも労働しているわけではないので長時間会社内滞在というべきだと思いますが)と忖度文化を生んでいるのです。