今日でも60歳定年制を取る企業がほとんどですが、同期社員が、多少の遅れはあっても、ほぼ同じように昇進昇格を繰り返していき、最後は取締役や執行役員に選ばれた者を除き、一斉に60歳で退職させられています。

日本企業の給与が安いのは
転職できる専門スキルがないから

 ここまで見てくれば、なぜ日本企業の給与が安いかは、明らかです。

 そこで働く労働者に専門的スキルがないからです。

 専門的スキルがなければ転職も難しいので、今いる会社にい続けるしかありません。社員は、会社から出ていくことができず、給与が上がらなくても我慢せざるを得ないのです。

 それでも、転職を試みる人がいますが、よほど特殊なスキル、経験を持っていない限り、移った先の会社で冷遇されます。なぜかと言えば、それは、転職した人が前の会社で15年選手であっても、転職した会社では1年選手ですから、下手をすると、1年選手と同じように扱われてしまうからです。

 メンバーシップ雇用の世界では、何といっても、その会社での社歴が重要です。社歴が長ければ、社内のいろいろな人と人脈があるから、多少の無理が言えます。定期異動でいろいろな部署を経験しているので、仕事を進める時に、どこの部署の誰に話を通したら、スムーズに行くのかを知っています。

 転職してきた1年選手には、こうした能力が欠如しているのです。

 そのうえ、日本企業から日本企業に移っても、給与は上がりません。どこの会社も年功序列賃金を取っているのですから、15年選手が転職すると、転職先の会社の15年選手のテーブルに入れられるからです。

 転職先の会社の年功序列賃金体系が、転職前の会社の賃金体系を大幅に上回っていれば話は別ですが、そうでない限り、給与はあまり変わらないのです。