ラグビー協会を追われた女性法学者が見た「おっさん組織」のしがらみ写真はイメージです Photo:PIXTA

日本ラグビー協会理事、新リーグ審査委員長を昨年退任した法学者の谷口真由美さんが、自身の経験を新刊『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館新書)としてまとめた。停滞した組織を変えるために外部から呼ばれた人が、結局「旧来のしがらみ」に絡みとられて意見を言えなくなったり、あるいは意見を言ったことで組織にいられなくなったりする…。ある程度社会で経験を積んだ人ならば、そんな光景を一度や二度ならず目にしたことがあるのではないか。何が失敗の原因なのか。組織が失敗する原因には似通ったところがあるのではないか。谷口さんに、その実情などを聞いた。(フリーライター 小川たまか)

検証、分析を行うための記録の一つとして

――『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』というタイトルを見て一般論が書かれているのかなと思ったら、日本ラグビー協会で何が起こったのかが谷口さんの視点から詳しく書かれていて驚きました。

谷口真由美さん(以下、谷口) 一応法学者なので、ここまでは大丈夫、ここからはアウトというところは考えて書いています。もっとエピソードはありましたが、これでもだいぶカットしています。

――冒頭から、いわゆるシャンシャン総会に谷口さんが驚く様子がつづられています。競技全体の底上げよりも大企業の論理が優先される場面も。どの団体、企業、業界でも組織の中でこういった閉塞感を感じている人は多いと思います。

谷口 私は日本ラグビー協会に、今後本当に良くなってほしいと思っています。これを書いた動機の一つはそれです。税金が優遇される公益財団であるならば、検証は必要。検証、分析を行うための記録の一つとして残さなければいけなかった。

 その視点で見たときに、過去には『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(※1)や『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』(※2)、あるいはハンナ・アーレントの「凡庸な悪」の考え方など、歴史から学ぶものはいっぱいあるのに、どうしてこうも同じことを繰り返すのだろうと。そう思ったときに、これは組織論ど真ん中の話だなと。
※1戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎/中公文庫
※2中根千枝/講談社

 会議なんかで「もしわからないことがあったらなんでも質問してください」と言われても、「こんなこと聞いたら恥ずかしいんちゃうか」と思うことありますよね。

 でも、あなたが感じている疑問・質問は実は他の人も感じている可能性もあるって、質問を促すわけですよね。それと一緒で、何かツラい事象が起こったとき、これは自分だけと思いがちだけれど、案外どこにでもある話なんちゃうかと。

――実際、たくさんあると思います。

谷口 なぜあちこちで多発するのか。それをこの本の場合は「おっさん」という軸を持ってくることによって、言語化できる人がいるだろうなと。