年功序列をやめ、社員の評価を実績主義に変え、パフォーマンスの悪い社員は解雇するようにしていけば、こうした必要はなくなりますが、それは今の日本の会社の制度や慣行から大きくかけ離れています。

 年齢による強制解雇システムを温存していかないと、会社はパフォーマンスの下がった高齢社員であふれかえってしまうのです。

ポスト不足と人件費上昇を
どうやって抑え込んだか

 日本型メンバーシップ雇用は、1960年代から70年代にかけて完成したものです。しかし、その頃にはすでに高度成長期の組織の急拡大が止まり始めており、中高年男性社員の増加によるポスト不足と人件費の上昇をどのように抑え込むかが、大きな経営課題となっていました。

 こうした中高年男性社員の急増を裏から支えてきたのが、高卒、短大卒の女性社員の存在です。彼女たちが、下級の事務員や技術員、現場労働者として採用され、安い賃金で働かされてきたことで、男性社員を上級社員と位置づけ、ポストにつけることが可能となっていたのです。

 女性社員には、性別定年制、結婚退職制が設けられ、年功賃金のカーブが立ち上がる前に退職させられるという仕組みが設けられていました。女性社員は、年齢が若い時だけ男性社員の部下として低賃金で働かされることで、年功序列で給与が上がっていく男性社員を支えるという経済的役割をも負わされていたのです。

 なお、こうした男女間の定年年齢格差については60年代から、下級審で、公序良俗違反で無効という判決が出始めていました。しかし、最高裁の判例は、81年の日産自動車事件(女性の定年を男性より5歳若く定めた男女別定年制の違憲性が問われた裁判)まで待つことになります。

 しかし、70年代、80年代となると、こうした女性社員で増加する中高年社員の人件費負担を支えるという仕組みだけでは持たなくなりました。そこで、日本企業が新たに導入したのが職能資格制度です。