職能資格とは、たとえば主事とか参事という社員としての階級を表すもので、経理課長や営業課長という職務とは異なります。職能とは、職務遂行能力の省略形で、どんな職務に配置されても適応できる能力のことを指しています。

 たとえば、管理職資格なら「係長以上の職務を遂行する能力を保有する者」といった具合で、あいまいな概念であり、いかようにでも解釈できるものでした。

 企業側の意図としては、一つには、大卒社員の急増でポスト不足に陥っていた状況でしたので、ポストからあぶれた大卒社員に職能資格を付与することで、昇進したように見せかけ、不満を抑えることにありました。

 もう一つの裏の意図は、中高年男性社員の増加による人権費の負担にあえいでいた企業が、「能力」というどのようにでも解釈できる基準を導入することで、社員の昇進や昇給を遅くしようとすることにあったのです。

非正規社員の増加が
中高年の雇用を支えた

 一方で、企業は、ポスト不足を解消するため、系列会社を増やしていきました。70年代から多角化戦略を推し進め、採算性の低い不要な系列会社をたくさん抱えるようになっていったのです。

 これらの系列会社は、90年代のバブル崩壊後、かなり整理されましたが、今日でも大企業には、多数存在し続けています。いわゆる天下りのためです。

 企業がもう一つ取った中高年男性社員を守るための仕組みは、期間工、準社員と呼ばれた「非正規社員」の雇用の増加でした。

 こうした非正規社員は、景気に応じて雇用調整が可能であるので、企業収益を安定させ、中高年男性社員の増え続ける人件費を支える役割を担ったのです。

 70年代になると、2度の石油ショックが訪れ、企業は減量経営を迫られたため、この流れに拍車がかかりました。

 進学率の増加による大学生の増加にもかかわらず、企業が正社員の採用を絞り始めたために、大学卒の就職難となりました。この結果、大学は序列化されていくようになりました。週刊誌が大学ごとの高校別合格者ランキングを掲載し始めたのもこの頃の話です。