本書の要点

(1)ガザ地区のパレスチナ人少女ファラ・ベイカーは、ツイッターでイスラエルによるガザ侵攻を実況。空爆の恐怖を吐露し、世界中から共感を集めることで、国際社会におけるイスラエルの立場を危ういものにした。
(2)ウクライナ内戦が勃発すると、ロシア政府や軍についてポジティブに描く一方で、ウクライナ政府や軍についてネガティブに書く偽記事が大量に拡散された。それらはロシア政府が主導したプロパガンダだった。
(3)英国人のエリオット・ヒギンズは、2014年7月17日に起きたマレーシア航空17便撃墜の際に使用されたミサイルの提供元がロシアであることを、SNSなどのオープンソースの情報を用いて、いち早く証明してみせた。

要約本文

◆市民ジャーナリスト
◇ツイッターを活用する

 2014年6月12日、イスラエル人の少年3人が、ハマスの戦闘員に誘拐され殺害された。イスラエルが報復としてハマスの関係者を逮捕すると、ハマスは応戦する形でイスラエル南部に地対地ロケットを撃ち込み、数発が着弾。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7月8日、ハマスに対抗するためにガザ侵攻を決断する。空爆を行い、7月17日には地上部隊がガザ地区に侵攻した。

 だがガザ地区に住む16歳のパレスチナ人少女ファラ・ベイカーは、西洋諸国のメディアがイスラエルを被害者のように見せる偏向報道をしていると確信していた。真実を伝えるべくファラは、市民ジャーナリストとして空爆にさらされる毎日の生活のナラティブ(語り)を、ツイッター上で英語を用いて発信することにした。イスラエルの破壊の実態を世界に伝えて国際社会の非難を喚起し、イスラエルの軍事行動を封じ込めるためだ。当初はあまり反響がなかったが、空爆の激化や死傷者の増加にともない、フォロワー数が800から20万に増えるまで、わずか数週間しかかからなかった。

 7月21日、ファラは自分の写真とともに、こうツイートした。「わたしはファラ・ベイカー。ガザ地区に住む16歳の少女です。生まれてから、3度の戦争を生き抜いてきました。もうたくさんです。#SaveGaza