翌日には、あるトレーラーにミサイルランチャーが積まれている画像を見つけ出し、このミサイルがブーク地対空ミサイルだと突き止めた。だが写真の撮影場所はなかなか特定できなかった。

◇SNSによる連携

 写真の撮影場所の特定に貢献したのが、米国のノースカロライナ州シャーロットに住むアリク・トーラーだ。トーラーはバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのセキュリティ部門に勤務する一般人である。ツイッターを眺めていると、ミサイルランチャーの撮影された場所を特定できないか、ヒギンズが呼びかけているツイートを見かけた。

 トーラーはミサイルと一緒に映っている店の名前に着目した。ロシア語を話せたトーラーは、店が「ストロイドム」という金物屋だと突き止めた。そしてグーグルで検索し、その店の住所と名前を法廷証言とした裁判所の記録を見つけ、写真がスニジネの西にあるトレツで撮影されたものだと突き止めた。また写真の影のかかり具合から、キエフ時間で正午から午後1時の間に撮影されたものということも判明した。

 さらにブーク地対空ミサイルを運んだトレーラーの出発点も確かめた。トレーラーの車体にはドネツクの電話番号が書いてあり、グーグル検索で車両レンタル会社の住所も判明。その会社の経営者は、親ロシア派に車両を盗まれたと証言した。

◇暴かれる真相

 ビギンスらはオープンソースから情報を収集し続け、最終的にブーク地対空ミサイルが運ばれたルートを明らかにした。ブーク地対空ミサイルはドネツクからズレツ(ドネツクの次の移動ポイント)へ運ばれ、次にトレツで写真が撮影され(トーラーが検証した写真)、さらにスニジネで動画として確認された。

 最終的にウクライナ内務省が公表した映像では、マレーシア航空17便の撃墜後、ミサイルを一基発射した後のブーク地対空ミサイルを積んだトレーラーが、ハーンシクの街を出ていく様子が確認されている。ミサイル発射地点についてはツイッターに写真が投稿されており、チェルボーニ・ゾフティンという村の少し東の野原と確認された。