講演を聴いて「勉強になった」で終わってしまう

酒井 学びへの姿勢はどうでしょうか?

鎌田 日本では、講演を聴いて「勉強になった」と目を輝かせる人がたくさんいます。でも、追加で自ら情報を取りに行くとか、手を動かしてみるといった主体性を発揮する人はそう多くありません。学ぶチャンスに恵まれても「今日は仕事が忙しいから」と後回しにしてしまいがち。目先のことにとらわれ過ぎて、中長期的なキャリア戦略やスキルアップと真剣に向き合う余裕がないのでしょう。

 一方、東南アジアの若者は積極的です。せっかく得た学びのチャンスをさらに実りあるものにしようという貪欲さを感じます。この違いは何なのか。自分の腕を磨くことが国の発展につながり、それが家族や自身の幸せにもつながると信じられるからかな、と感じることがあります。

酒井 日本に足りないのは、「希望」でしょうか?

鎌田 実際のところ、10年後の日本が今よりものすごく発展していると信じている日本人は減っているでしょう。

知識ではなく「経験」が圧倒的に足りない

酒井 日本の参加者の長所はどんなところでしょうか?

鎌田 日本の参加者も知識は負けていません。ただ、海外の参加者と比べて資格偏重で、実際に手を動かした経験がないという人が目立ちます。

 知識があるのは素晴らしいことです。本やネットで情報収集することも。しかし、それだけではわからないことってやっぱり多いんです。IT部門に所属していながら、「標的型攻撃はメールで来る」「サイバー攻撃を仕掛けているのは中国」「サイバー攻撃の被害は情報漏えい」など、たまたま読んだ記事の影響で中途半端な理解をしてしまっている人もいます。大事なのは、自ら手を動かし、自分の知識が本当に正しいのか否か検証することです。

 語学に似ていますね。机に向かって勉強するだけじゃなく、実際に会話をすることでいろいろな気づきを得られたという経験のある人は多いはずです。