08年といえば、イラク戦争の影響から原油の先物価格が1バレル147.27ドルと過去最高を記録し、リーマンショック(金融危機)に世界中が震撼させられた年である。さらに、世界的な穀物高騰による食糧危機の影響で、輸入小麦の売り渡し価格も過去最高の7万6030円/トンまで高騰した年であった。

 現在の世界の状況は08年当時と似ているが、「エネルギー、穀物、ウクライナ侵攻問題の規模があまりにも大きく、先がまったく見えない」という点で、今年の方がはるかに危機的状況である。

 特に、生活になくてはならない石油、天然ガスといったエネルギーと小麦等の穀物などの食の供給面で、代替をどう調達するのかが非常に不透明であり、さらなる物価高騰もあり得る状況だ。

小麦価格が高騰する
3つの理由

 政府の売り渡し価格は、20年下期は4万9210円/トンだったが、1年後の昨年下期は6万1820円、そして今年上期が7万2530円と、1年半で約1.47倍の2万3230円(1kg当たり約23円)も値上がりしている。

 農水省は、今回の小麦高騰の原因として下記の3つ挙げている。

(1)昨年夏の高温・乾燥による米国・カナダ産小麦の不作の影響が大きく、9月以降も小麦の国際価格が高水準で推移したこと

(2)米国・カナダ・豪州の日本向け小麦の産地における品質低下等により、日本が求める高品質小麦の調達価格が上昇したこと

(3)ロシアの輸出規制、ウクライナ情勢等の供給懸念も、小麦の国際価格の上昇につながったこと

 これらのうち、(3)のウクライナ情勢は、悪化の一途をたどっている。ロシアとウクライナは、小麦の大生産国である。生産量は、ロシアが世界第3位、ウクライナが第7位。輸出量は、ロシアが第1位、ウクライナが第5位である(いずれも2019年FAOSTATより)。

 依然、先が見えない状況であり、ウクライナでは今年の小麦の収穫・作付けがどの程度できるのか不明である。また、ロシアから世界各地に、今まで通り小麦が輸出されるとも思えない。