(上)多数の参加者と応援者を集めた第3回企業対抗駅伝
(下)積極的に名刺交換する参加者たち

 今、「企業対抗駅伝」が人気だ。と言っても、社員兼選手が社名を背負って走る、実業団チームの駅伝ではない。選手ではない一般の社員が、社内でチームをつくってエントリーし、他の企業と鎬を削る「一般参加型企業対抗駅伝」である。

 主催するのは、一般人参加のフットサル大会など「DO(する)スポーツ」を数多く手がけるイベント会社「スポーツワン」だ。2010年から毎年、東京の夢の島競技場を主会場として大会を開催し、参加者は第1回の91社、123チーム、1759人から、2012年の第3回には228社、387チーム、3792人に膨れ上がった。

 興味深いのは、同社が企業対抗駅伝を単なるランイベントではなく、社内外の人々の交流を活性化する場としても位置付けていることだ。当然のことながら、チーム内の社員同士の交流は深まる。また、応援する人たちをより多く連れてきたチームには「最多応援賞」を授与するなど、「社内」交流の輪を拡げる仕掛けもある。

 スポーツワン執行役員の伊藤雄次郎氏はこう話す。

「近年は経費削減などもあって、社内運動会などの行事を中止する企業も少なくない。一方で若い人が飲み会に参加しないなど、社内のコミュニケーションは不足する傾向にあります。何とか高めたいと考える人は多いはずと考えて始めたイベントですが、予想を上回る参加者数となり、ニーズの大きさを改めて知りました」

 一方、会場には「名刺交換ブース」も設ける。5人以上と名刺交換すると、豪華賞品が当たる抽選会に参加できる権利を得られる。これが「社外」交流を促す仕掛けだ。走る前後はブースに張り付き、来る人来る人と名刺交換に勤しむ人もいるという。ここ数年流行っている異業種交流の要素を上手く取り入れ、これも人気の秘訣となっているようだ。

 さらに、参加者がより楽しめるように、エンターテインメント性を高めていることも特徴だ。第3回企業対抗駅伝では、最初にサンバチームが出てきてダンスを披露し、そこからはプロのMCが司会進行。スペシャルゲストのサンプラザ中野くんが往年のヒット曲『ランナー』を歌う中、スタートの号砲が鳴り、参加者は一斉に走り出した。

 終了後は大会公式ホームページなどで総合順位と共に、業種別、役職別の順位も発表する。たとえば「IT・通信」「サービス」「食品・飲食」などの業界ごと、あるいは「部長・課長」、「社長・役員」といった役職ごとの順位がわかる。これらはチームメイト同士で見て楽しむほか、名刺交換した人に電話をしたときや訪問したときの話のネタにも使えそうだ。

 ところで、参加者たちは企業側の費用負担で参加しているのかと思いきや、9割以上が自腹を切っているという。それだけ社内外コミュニケーションにつながるツールに、現代のビジネスマンは“飢えている”という見方もできるだろう。一般参加型企業対抗駅伝は、今後も参加者が増えそうな気配だ。

(大来 俊/5時から作家塾(R)