結婚が個人と個人のつながりでないため、「借金トラブル」などの「母の品格」を問題にして、小室さんが秋篠宮家の婚約者としてふさわしくない、との主張をしたメディアも多かった。

 これは端的にいって、小室家と秋篠宮家では「家柄がつり合わない」といっているのと同じで、憲法14条(法の下の平等)で禁じている「門地」による差別にほかならない。

日本のTwitterユーザーの匿名率は75%以上
他国に比べ突出、誹謗中傷の温床に

 昨年の結婚時には、メディアやネットの誹謗(ひぼう)中傷による眞子さんの「複雑性PTSD」が公表された。天皇に対する直接のバッシングは見当たらないが、皇室に対するバッシングは実は以前からあった。

 1993年には皇后美智子さま(当時)が倒れて「失語症」となり、2004年には皇太子妃雅子さま(当時)の「適応障害」が公表されている。

 総じて言えば、これらのバッシングは、皇室の一員が、個人であろうとすることに対する「世間」の反発だと考えられる。

 天皇家の一員という身分に反するような個人の振る舞いは、「わがまま」だといった批判がされたのだ。

 かつての皇室バッシングと、今回の小室さんバッシングが決定的に異なっていることは、誰でも自由に発信ができ、それがリアルタイムで爆発的に広がるインターネットが普及していることだ。

 日本はSNSのTwitterユーザーの匿名率が75%以上で、他国の30~40%と比較して突出して高く、これがネットの誹謗中傷をまん延させる大きな要因になっている。

 私は、公益性のある内部告発などは別としても、実名でネットに発信できないような内容は、匿名でも発信すべきではないと考える必要があると思う。

 それが、日本に「自分は自分。他人は他人」という個人を生み出す一歩になると考えるからだ。

(九州工業大名誉教授・評論家 佐藤直樹)