黎明期からテレワークに着目
創業社長もワーケーション
コロナ禍が襲来して以降、急激に普及しつつあるテレワーク。この働き方に約20年前から着目し、関連するソフトウエアを開発するとともに、在宅勤務を実践してきた会社がある。
その会社とは、東京都千代田区に本社を置くe-Janネットワークスだ。同社は2002年に、社内メールを携帯電話で閲覧できるサービス「カチャットサーバー Version 1.0」をリリースして以降、テレワークプラットフォームの分野で勝負し続けている。
この製品は後に「CACHATTO」に名称変更し、リモートデスクトップなどの新機能を追加していくのだが、e-Janネットワークスはそれ以前から自社でもテレワークを導入。社員が出社と在宅勤務を自由に選べるようにしてきた。
今では、本社にはわずかな社員しか出入りしておらず、創業者である社長の坂本史郎(59歳)ですら顔を出すのは月に3回ほどだ。あとは自宅、別荘、高知オフィス、函館のワーケーション拠点をグルグル回っているという。
自由な社風に加え、世界屈指のIT大国であるインドのベンガルールに現地法人を持ち、インド人社員と連携した開発体制を整えているのも同社の面白いポイントだ。
一般的な日本企業であれば、日本の本社が「頭脳」、海外支社が「手足」となる例が多いが、e-Janネットワークスはそうではない。
社内メールのリモート閲覧サービスは、創業当初にインド主体で開発。その派生製品もインドで企画・開発・販売してきた。海外市場向けのテストマーケティングもインドで行い、製品や機能を日本市場にフィードバックしている。
つまり同社は、国内外の区別がなく、トータルで一つの組織を形成しているのである。これほど柔軟な開発体制を持つソフトウエアメーカーは日本では珍しいといえる。
だが実は、この体制を生み出した坂本はIT畑の出身ではない。異業種から参入し、日本とインドをまたにかけながら会社を大きくしてきたのだが、その過程で何があったのか。