思い描いた学生生活とは違う、しんどい局面もあったかもしれませんが、振り返ればその中でも問題意識を持ち、目的を達成するために工夫を凝らした経験があるはずです。
たとえば「グランド使用が限られる中、WEB会議システムを活用し練習時間を効率化させた」「留学ができない中、オンラインで数カ国の知り合いを作り語学力が想定より上がった」「サークル活動に制約がかかる中で、コロナ下での活動の在り方について皆で意見交換を行った」なども、今の時代ならではの立派な体験であり創意工夫です。
想定していなかったことにぶつかったとき、どのように今できることを考え、どう行動したのか。そのときに抱いた感情とともに振り返り、書き出してみることで、自分らしさが伝わるエピソードに気づけるのではないでしょうか。
また、今後起こり得る変化や不自由な事柄に対しても、臆することなく「変化対応力や学ぶ力をつけるチャンス」と前向きに臨むことをお勧めします。ガクチカで語れるエピソードだけでなく、「VUCAの時代を生き抜く力」も身につけることができると思います。
親は就活の現状を理解し
精神的なサポートを
前述のように、コロナ禍で子どもたちを取り巻く環境は大きく変化しています。大学生活もリモートがメインとなり、親としては気を揉むことも多いことでしょう。
リモートばかりで授業についていけているのだろうか、そろそろ就活も始まるけれど将来を考えているのだろうか……。つい「本当に大丈夫なの?」と聞きたくなりますが、当人のほうが何倍も不安なのです。
「大丈夫なの?」と問い詰めたり、「就活しないでいいの?」とけしかけたりするのではなく、日常会話を通して子どもがコロナ禍でどんなことを学んでいるのか、どんな壁にぶつかりどんな工夫を凝らして乗り越えたのか、ぜひ聞いてあげてください。そして、話を聞きながら学びのポイントやエピソードを引き出し、それを褒めたり応援してあげたりしましょう。何をアピールすればいいのか悩んでいたら、ともに学生生活を振り返り、整理してあげるのもいいでしょう。
仕事を持っている親御さんであれば、「変化の激しい今の環境下ではこんなタイプ、こんな経験やスキルが求められている」と感じることもあるのではないでしょうか。社会人の先輩として、感じたことをフラットに伝えてあげることも、時には必要かもしれません。
(株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長 増本 全)