忖度政治につながりかねない
日本学術会議の任命拒否問題

――山極さんが日本学術会議の会長を退任した20年9月末のタイミングで、菅義偉首相(当時)が日本学術会議の次期会員候補6人の任命を拒否する問題がありました。それについて、当時はどう思いましたか。

 これは単純に対話の拒否です。

 私が菅首相に聞いたのは一つだけです。「なぜ6人を任命しなかったんですか?その理由をおっしゃってください!」と。

 質問に答えないことが一番腹立たしいし、民主主義に反しますよね。われわれは常に根拠というものを持ってさまざまな判断をしています。会員の任命もそうです。総理は任命権を持つのだから、任命拒否してもいいんです。

 しかし、その理由を言わなければ、われわれはなぜ任命が拒否されたか分からず、次の会員選抜のときに、任命拒否の理由をきちんと反映させることができません。これがまかり通ったら、政権が理由を言わず任命を拒否するという話がどんどん普及してしまいます。それは忖度政治につながると感じています。

 まず、会員候補の任命拒否の理由を言っていただいた上で、日本学術会議のあり方というものを議論すべきではないでしょうか。「理由を言わないのはおかしい!」というのが私の意見です。