例えば1ドルが1000円ならば、米国人が銀行でドルを円に替えて日本に買い物に来るだろうから、米国人のドル売りでドルが値下がりしていくはずだ、ということになる。

 日米金利差や為替投機などによっても、短期的な為替レートは変動する。それは、日米の物価を一致させるレートの周辺での動きであって、太陽の周りを回る惑星の動きのようなものだと考えてよい。

 したがって、「円安が行き過ぎているなら、いつかは戻るだろうから、外貨を持つのは危険だ」と考える人もいるだろう。

 しかし、円安が行き過ぎているからといって、「将来はドル安円高になる」と考えてはいけない。

 上記の理屈は、「円安過ぎると貿易収支が不均衡になり、貿易赤字国による輸入のための外貨購入によって為替レートが修正される」というものだ。しかし、円安過ぎても貿易収支が不均衡にならなければ上記の理屈は成り立たない。

アベノミクスで円安が進んでも
貿易黒字が増えなかった理由

 現在の円相場は、25年前と比べて明らかに安い。しかし、当時大幅な黒字であった貿易収支が、最近はおおむね均衡している。理屈上は不思議なことが起きているのだ。とにかく事実として貿易収支が均衡しているのであれば、ドル高円安が修正されていくと考える特段の理由はないのだ。

 ちなみに、アベノミクスで大幅な円安が進んだとき、筆者は不覚にも「これで貿易黒字が大幅に増える」と予想したが、見事に外れてしまった。その反省として、現在考えている「敗因」は以下である。