政府が為替介入して
円高に誘導する可能性は小さい

 為替レートを動かす力として、かつては重要であった「政府による為替介入」はどうであろうか。かつて、円高で輸出企業が深刻な打撃を受けそうになると、政府がドル買い介入をしてドル安円高を止めたことが頻繁にあった。

 最近では、日本政府による為替の介入は行われていないようだが、円安で困ったことが起きるならば、円安阻止のためのドル売り介入が行われる可能性もないとはいえない。

 そして実際、原油価格や食料価格などの「輸入インフレ」と円安による輸入品価格上昇がダブルパンチで来そうなため、介入を望む声が出てくることは十分に考えられる。

 しかし、インフレの主因が原油価格や食料価格の高騰である以上、インフレ抑制のための為替介入は考えにくいのではなかろうか。

 そもそも、為替介入は市場メカニズムを歪めるものである上に、ドル売り介入は実質的に「輸出企業への課税と消費者への補助金」となるため、よほど説得的な理由がない限り、当局は介入をしたがらないはずだ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解である。また、わかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない。