既にその大病院の他科に通っていても
別の科に初めて通うときには紹介状が必要に

「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」には、緊急時や、やむを得ない事情がある場合には、徴収しなくてもよい例外規定が設けられている。だが、これも2022年度の診療報酬改定で厳格に運用されることになった。

 特別料金徴収の例外として、これまでは、初診も、再診も以下のものが認められていた。

(1)自施設の他の診療科を受診している患者
(2)医科と歯科との間で院内紹介された患者
(3)特定健康診査、がん検診等の結果により精密検査受診の指示を受けた患者
(4)救急医療事業、周産期事業等における休日夜間受診患者
(5)外来受診から継続して入院した患者
(6)地域に他に当該診療科を標榜する保険医療機関がなく、当該保険医療機関が外来診療を実質的に担っているような診療科を受診する患者
(7)治験協力者である患者
(8)災害による被害を受けた患者
(9)労働災害、公務災害、交通事故、自費診療の患者
(10)その他、保険医療機関が当該保険医療機関を直接受診する必要性を特に認めた患者

 だが、2022年度からは、上記10項目がすべて認められるのは初診だけになる。さらに、(1)は「自施設の他の診療科から院内紹介されて受診する患者」に変更された。つまり、既にその大病院に通っていても、他の診療科を受診する場合は医師の紹介状が必要になるということだ。

 また、(10)には、「急を要しない時間外の受診、単なる予約受診等、患者の都合により受診する場合は認められない」という文言が加えられ、大病院の直接受診には一段ハードルが高くなった。

 再診の場合、特別料金徴収の対象となるのは、他の病院や診療所に文書で紹介したにもかかわらず、大病院を受診した患者だ。上記の(1)、(2)、(3)、(6)、(7)に該当することはあり得ないため、要件から削除された。

適用は10月1日から、それまでにかかりつけ医をつくって
紹介状を書いてもらおう

 2016年度に導入された「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」は、診療報酬の改定を経るごとに、対象病院が拡大され、今回は患者の負担も引き上げられた。特別料金を徴収しなくてよい例外規定も、範囲が狭められ、大病院を紹介状なしで受診しようとする人を少しずつ追い込んでいる。

 今後は、地域にあるちょっと大きな病院に、うっかり行ってしまうと特別料金が加算される可能性がある。ただし、「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」の見直しには経過措置が設けられており、適用されるのは今年の10月1日からとなっている。

 それまでの間に、身近にある病院の規模を調べ、特別料金のかからない中小病院や診療所の中で、かかりつけ医をつくっておきたい。

 200床未満の中小病院や診療所などで紹介状を書いてもらえば、必要に応じて大病院で必要な治療は受けられる。ちなみに、紹介状の正式名称は「診療情報提供書」といい、書いてもらうのに2500円かかる。ただし、健康保険が適用されるので、70歳未満で3割負担の人は750円、70~74歳で2割負担の人は500円、75歳以上で1割負担の人は250円が自己負担額だ。いきなり大病院に行くよりも負担は抑えられる。

 費用の面だけではなく、自分の病気のことを把握してくれているかかりつけ医がいるということは、日頃の健康管理の上でも安心だ。日常的な医療はかかりつけ医を受診し、大きな病気になったら、かかりつけ医から大病院を紹介してもらうようにしよう。