専門家としては、このような考えには賛同できません。厚生労働省のデータによると、60歳を迎えた男性の平均寿命は84.2歳。男性も長生きですね。そもそも、死亡する時期は誰にもわからないのです。

 60歳時に住宅ローンの残りを一括返済してしまうと老後資金が心許ない金額になってしまうという人は、見直しプランを立てましょう。まずは下準備。次の3点を書き出します。

(1)返済表から今のローン残高と、完済年齢
(2)60歳以降の収入を確認。給与収入、企業年金や個人年金の有無と金額
(3)貯蓄と退職金を合わせた金融資産額

再雇用後の収入が見えたら
2つの見直しプランから選択

 70歳まで毎月10万円の返済が続くケースで見直し例を見てみます。

 60歳時点でのローン残高は約1100万円。一括返済は難しいのですが、500万円の繰り上げ返済なら何とか工面できそう。この場合、見直しプランは2つ考えられます(下図参照)。

【見直しプランA「期間短縮型の繰り上げ返済」】
 60歳以降も働き、再雇用後の給与が思っていたより多く、月10万円のローン返済を続けても年間収支が赤字にならないと見込めるなら、500万円で「期間短縮型の繰り上げ返済」を行います。妻が働き続ける家庭もこのケースに当てはまります。

 返済期間は5年短くなるため完済年齢は65歳となり、年金だけの収入になる前に返済を済ませることができます。