不動産は中国のGDPの
3割近くを占める

 共産党政権の経済と社会運営は、かなり困った状況を迎えたと考えられる。計算の方法にもよるが、不動産セクターは中国のGDP(国内総生産)の3割近くを占めるといわれる。投資用マンションの建設と販売が減少したことで、景気減速のリスクが高まっている。

 また、コロナ禍は個人消費だけでなく企業の設備投資も下押しする。ウクライナ危機による世界全体での供給制約の深刻化、さらにはIT先端企業への締め付け強化による株価下落も中国経済にマイナスだ。

 習政権は公共事業などによって落ち込んだ個人消費、投資、生産を埋め合わせし、さらには積み増して、成長率の低下を食い止めなければならない。それを支援するために、金融緩和策は強化され、減税や補助金の支給など財政政策も拡張的に運営されるだろう。

 ただし、経済対策が総動員されたとしても、中国経済の先行きは楽観できない。不動産業界では決算開示が遅れるデベロッパーが増えている。それだけ資産価値の毀損(きそん)は深刻だ。

 共産党政権が、経営危機にある不動産デベロッパー恒大集団に公的資金を注入する展開も想定しづらい。となると銀行は、不動産関連の融資を絞らざるを得ない。米国をはじめ中国以外の中央銀行は金融政策の正常化を急いでいる。

 中国と米国の金利差拡大は、資金流出圧力を高める。それに信用収縮が加わり、中国で金融システム不安が起きる展開は否定できない。それが現実のものとなれば、世界経済は新たな「チャイナ・ショック」と呼ぶべき事態に直面するだろう。

 ウクライナ危機によって世界的にインフレ懸念が急速に高まっている。その状況下で中国の金融市場の不安定感が高まり、経済成長率の低下傾向もより鮮明となれば、一時的に世界経済には無視できないマイナスの影響が及ぶ。

 わが国のように中国の需要を取り込んできた経済への逆風は相当に強まる。当面、中国は世界経済の足を引っ張るだろう。