習近平,中国経済の「三重苦」とは? ウクライナ危機による原油高も覆いかぶさる悲劇北京、人民大会堂で開催された「全国人民代表大会」にて(2022年3月8日) Photo:Andrea Verdelli/gettyimages

3月に開催された中国の「全国人民代表大会」で、2022年の実質GDP成長率目標が、「5.5%前後」に引き下げられた。過去30年程度で最低の水準だ。不動産市況の悪化、新型コロナ感染再拡大による人流・物流の寸断、およびIT先端企業への締め付け強化といった、中国経済が抱える「三重苦」に、ウクライナ危機の影響が加わり、中国経済への下押し圧力が強まっている。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

実質GDP成長率目標「5.5%前後」
過去30年程度で最低の水準

 3月に開催された中国の「全国人民代表大会」(全人代、国会に相当)で、2022年の実質GDP成長率目標が、「5.5%前後」に引き下げられた。過去30年程度で最低の水準だ。習政権は経済環境の悪化に危機感を強めているようだ。今後、成長率の目標達成に向けて、金融緩和策や財政支出が強化されるだろう。

 ただ、中国経済の専門家の間では、5.5%の目標達成は難しいとの見方が多い。例えば米ゴールドマン・サックスは、「4.5%」と予想している。背景として、ウクライナ問題による原油価格の上昇がある。

 不動産市況の悪化、新型コロナ感染再拡大による人流・物流の寸断、およびIT先端企業への締め付け強化といった、中国経済が抱える「三重苦」に、ウクライナ危機の負の影響が加わり、中国経済への下押し圧力が強まっている。

 一方、習近平国家主席は「3期続投」をほぼ確実にしつつあるようだ。今後、習氏が一党独裁体制を維持するため、IT先端企業などへの締め付けは強まるだろう。

 共産党政権は、不動産デベロッパーに資産の切り売りを求めている。それは国内経済のマイナス要因になる可能性が高い。また、コロナ禍でサプライチェーンもかなり不安定化している。

 三重苦とウクライナ危機の影響は深刻化し、想定以上に中国経済の減速が鮮明になる恐れがある。当面、中国は世界経済の足を引っ張るだろう。