「『環境を変えること』が目的になり、『どういう環境に身を置きたいのか』が分かっていなければ、いくら転職を繰り返しても『会社辞めたいループ』にはまってしまいます。この悪循環から抜け出すには、自分がどういう働き方をしたいのか、そのためにはどんな会社に行きたいのか、“目的地”を明確にする必要があります」

 負のループを起こす仕組みは、内的要因に加え、外的要因もある。

「今は転職希望者を支援する転職エージェントや求人サイトのレベルがかなり高くなってきていて、登録さえすれば転職自体はそこまで難しくない状況です。しかし、目的地が不明のまま転職エージェントを利用すれば、エージェントが転職活動の主導権を握り、当事者が納得のいく転職はできなくなります」

転職エージェントとの
上手な付き合い方とは

 自身も転職エージェントとして活動していた過去を持つ佐野氏は「転職エージェントはあくまでも、目的地へたどり着くための“交通手段”」と言う。ところが実際には、エージェントを“運転手”と勘違いしている人が多いそうだ。

「エージェントの仕組みは優秀ですから、望めばどこかしらには連れて行ってくれます。しかし、『とにかく今の環境から抜け出したい』という気持ちだけで目の前の飛行機に飛び乗っても、満足できる場所には到底たどり着けません。ゴールを決めずに転職エージェントを頼る人は、本来“パイロット”でいなくてはいけないところ、ただの“乗客”になってしまっているのです」

 では、自身がパイロットとしてエージェントという飛行機を操縦するために、重要なポイントとは。

「まずは目的地を明確にし、決まったら、その場所へ行く交通手段を持つエージェントを探しましょう。飛行機でたとえると、A社のエアラインしか就航していない目的地へ行くときに、B社の便を予約する人はいませんよね。このように、エージェントによって案内できるルートは異なりますから、『大手のエージェントならどこでも安心』と思うのではなく、自分が目指す業界・職種の実績があるエージェントを頼ってください」

 もし担当のエージェントの得意分野が自分の目的地とズレている場合は、「担当変更の交渉をしましょう」(佐野氏)とのこと。エージェントからしてみても、自分が紹介できそうにない業界への転職を望む利用者を根気強く相手にするより、いっそ担当をチェンジしてもらって、マッチングの良い相手の活動を支援するほうが効率的に売り上げが見込める。両者のために、機長たる転職希望者は、目的地へ行くための最善の方法を模索・提案するべきなのだ。

「相性が良いエージェントが見つかっても、『最終的な判断は自分で行う』と肝に銘じてください。実はエージェントのなかには、少なからず『悪魔のエージェント』といって、企業と口裏を合わせ、なんとか利用者を付き合いのある会社に入れようとする人もいるからです」