新型コロナウイルス感染者が1日当たり10万人と過去最大を記録した「第6波」。最大の感染拡大地域である東京は、3月21日でまん延防止等重点措置が解除されたが、日本全体が次の「波」を警戒している。警戒の根底には「病院過剰国」である日本の医療体制が抱える問題が横たわっている。(国際医療経済学者・グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン〈GHC〉会長 アキよしかわ、GHC代表取締役社長 渡辺さち子)
コロナ患者受け入れ実績
病院の実名リスト公開
全国の病院がコロナ患者に対応できる病床をどれくらい確保しており、実際にどれくらいのコロナ患者が入院しているのかを、病院の実名が入った形で公表されているのをご存じだろうか。実は、2021年12月より厚生労働省のホームページでリストが公開されるようになった。病院が病床確保による補助金を受け取る要件に、情報公表が盛り込まれたのである。
政府の狙いは、コロナ患者のために確保された病床の一部が、補助金を受け取りながらも感染拡大のピーク時に使われなかった「幽霊病床」の解消だ。病院別に実名でコロナ受け入れ実態の情報を公開することで、情報の透明性を確保しようと考えたようだ。
公開されたデータだけを見て、各自治体の保健所などは入院が必要な患者と自宅や宿泊療養が可能な患者をしっかりと仕分けて(医療関係者の間では「トリアージ」と呼ぶ)、適切な入院医療を提供するための調整がされていたのか、病院は地域のコロナ患者を適切に受け入れていたのか――などを単純に判断はできない。コロナ患者の需要と供給がうまくマッチできなかった背景には複数の要因があるからだ。
それでもデータから明らかになった問題はある。日本の医療提供体制に偏りがあるという点だ。